劇場空間

元気だして行きまっしょ。 機械も長く使っていると、動きが鈍くなります。油をさして、動きを良くしてあげないと。オリーブのように、豊かな実を育てられるブログにしたいです。

新橋演舞場「7月大歌舞伎」 襲名披露公演

 

    

   いざ、新橋演舞場に。

わくわくしながら、中に入る。

 七月の大歌舞伎は、売り出し初日で、完売。私はネットで、あれよあれよのと消えて行く、空席に、えい、と買ってしまった席だった。

 19000円という高額もさながら、前から4列目の、2番で、一番奥の席だけど、まあ、良く見えるだろうと期待して。

 ところが、新橋演舞場は、南座や、松竹座とは違って、大きな劇場で、私の席は、実際のは、前から3列目で、奥まった所で、前との段差がない。

 その上に、前に座って入る、3人が、背の高い女性ばかりで、着物を来ていて、頭が大きくて。

頭の間からしか見えない。

 最初の出しものは、「将軍江戸を去る」

 中車を襲名した、香川さんが、とっぱなから登場。声が枯れていて、耳の悪い私には、言っている言葉が聞き取りにくい。

 オペラグラスを持っているので、顔の隅々までわかるので、疲れているなあ、と良くわかる。2ヶ月の連続興業で、顔のやつれも目立つ。

 海老蔵は、元気一杯で、将軍役の団十郎との親子共演、声が良く通るので、こちらの方は、良くわかる。

  息子の団を、5代目猿之助に育て上げる為に、歌舞伎の世界に飛び込んだけれど、 歌舞伎は、踊りが基本で、子供の時から、立ち居振る舞いのお稽古は、踊りで造り上げられる。

 「将軍江戸を去る」というような、台詞だけでやっていけるお芝居なら、まだしも、これから大変だろう。これからの精進は、猿之助の血を引いてのDNA次第で、どこまで?。

団十郎は、さすがの重み。台詞回しも、声色も申し分なし。

口上まで、30分の休憩。冷えるので、一旦外に出て、ぶらついて、時間稼いで、また中に入って、売り物の、舞台写真を観たり。

 口上では、一番向こうに、海老蔵、その手前に、団十郎、猿之助、中車、団子が、座っている。

 団十郎の披露挨拶の間、猿之助、中車、団子は、頭を床にすりつけるようにして聞き入っている。海老蔵は頭を半分くらい下げた状態。

 パリ公演での、猿之助(亀治郎時代)が得意のフランス語での、オペラ座の怪人をもじっての、亀治郎さんの挨拶を感心して聞いていて、団十郎さんは、教えられたフランス語読みの挨拶 を、ちんぷんかんぷんわからないで、しゃべっていて、フランス人が笑っていたことなどの面白いエピソードを入れて、紹介したり、団子は、団十郎の娘さんの所で、踊りのお稽古に通っていたので、我が子のように、この舞台を喜んでいると紹介。

 海老蔵は、パリ公演に続き、ロンドンでも、猿之助と一緒で、仲良く、猿翁を襲名した、3代目猿之助は、尊敬する恩人だという話、中車とは映画での共演が多く、親しい間柄だとの話。

 猿之助、中車、団子は、紹介されて、市川家との縁と御蔭で、との感謝の挨拶と、これからの生涯かけての、名に恥じないように、精進いたします覚悟のほどを、口上。

 垂れ幕は、福山雅治からの寄贈で、隈取りを描いた物。

 私が新橋までも、はせ参じたわけは、新猿之助の「黒塚」を観たかったから。

 先代の猿之助、猿翁は、踊りの名手で、「黒塚」を観て、とても感激したのですが、

 亀治郎の踊りを、パリで初めて観た時から、踊りの名手だとびっくりして、すっかりフアンになったのですが、猿之助襲名で、「黒塚」を踊るので、一段と飛躍した踊りが観られるだろうと、絶対に逃したくない気持ちだった。

 この時ばかりは、持って行ったカバンをお尻に引いて、ペットボトルの上に、お尻を載せて、しっかりと観た次第でございます。

  もう、もう言葉も出ないほど、素晴らしい。

 山伏の一行が一夜の宿を求めて、やってくる。老婆は、前世の罪を洗われて、すがすがしい気持ちで、喜びに満ちて、芒が原で、舞い踊る。

  亀治郎さんの踊りは、遊びがあって、ひょいと抜けた身体の動きが、軽やかで、何とも言えない、セクシーで美的な動きを見せる。

 そういう踊り方が、「黒塚」には、ぴったりしているのだが、亀治郎さんは、「黒塚」が特にお気に入りだそうで、さもありましょう、ありましょう。

 「決してご覧じありますな。」と蚊帳の中を見ないようにと念押しして、山に薪を取りにいくのですが、観てはならぬ、と言われたら、よけいにみたいもので、中を覗いて、鬼の住処であることがわかる。腰を抜かしたお付きの者に出会って、鬼の本性をあらわす。 鬼に変わって、行者に数珠で念仏を唱えられて、怒り踊る場面は、高飛びや、花道に追われて、バタンと身体ごとに、床に頭から倒れる場面もあって、「あ、」と叫んでしまった。すぐ近くでのこと。

 観客は、一斉に、花道の猿之助を観ているので、私の方からは、観客の顔が一見えている。

 その中に、新派の、勘三郎のお姉さんの波野久里子、と歌手のペギー葉山さんが。

 皆、驚きと感嘆の表情。

 鬼は、恥じ入って、芒が原の中で、うな垂れて、幕が降りる。団十郎、右近、猿弥、との共演で、猿之助の舞とそれについている音楽、お囃子が見所。

 20分の休憩で、最後は、海老蔵と猿翁の共演での「 桜門五三桐」

 海老蔵は、のびのびと豪快で自信たっぷりの、石川五右衛門を演じていて、この役所は海老蔵にぴったり。

 猿翁は、真柴久吉。椅子に座って、黒子さんが、後ろで支えている。

 身体の不自由はあるけれど、鍛え上げた肉体芸は、衰えていない。わすかな動きに、品格と名人芸は、誰もマネの出来ないものがある。わずか10分ほどの舞台だけど、あでやかな舞台に、春爛漫、という喜びのある舞台だ。

 観客席からは、惜しみない拍手がわき起こり、カーテンコールに答えて、幕が再び開いた。

 皆、私も、スタンディングで拍手喝采。

 猿翁さんが、手真似で、黒子さんに、ベールを取るようなしぐさ。

 息子の中車さん、素顔の香川照之さんがベールを脱いで、挨拶。

 後ろの人は、泣いていて、そういう人、多かったと思う。

海老蔵や、中車、新猿之助のお父さん、

 猿翁さんも、最後まで、手を振って、観客の声援に応えていた。