劇場空間

元気だして行きまっしょ。 機械も長く使っていると、動きが鈍くなります。油をさして、動きを良くしてあげないと。オリーブのように、豊かな実を育てられるブログにしたいです。

秘密は歌う

 

   

  

 兵庫県立芸術センターは、コナミの隣にあるので、そこから楽しそうに帰って来る人達をしり目に、コナミに行くのですが、駅を出ると、看板に、演劇の案内が最近よくみかけるようになって、観たいと思うものが、時々あるのですが、「秘密は踊る」という案内に、

好評をはくした、舞台、という宣伝文句。

 コナミのついでに、前売りチケットを買いに行くと、チケット売り場は閉まっていて、

当日になって、開演の2時間前に、電話をすると、予約できるというので。

 「チケットは、1時半までに取りにこれますか?」と言われ、行けない、というと、2時まで置いておきます、とのこと。それを過ぎると売ります、という実にのんびり、親切な対応。

私が行けたのは、ぎりぎりの5分前でした。

席は結構空いていて、私の横2つの端席は空いた状態。

この劇場は、友人に誘われて観た、渡辺えりこの一人芝居以来。

昔は、労演に入って、毎月のように、新劇を観ていたのですが、その頃は、大阪の産経ホールや、厚生年金会館、神戸の大倉山にある、文化ホールまで足を運んでいた、熱心さでした。

演劇の道に進みたかった頃の、エモーショナルな高ぶりが、また戻って来たような感覚。

俳優座の15期生の、三田和代と、村井国夫の、いぶし銀の演技が光りました。

ノエル、カワード作の、3部作の一つだそうで、劇作家の最後の作品だとか。

以下、ちらし引用。

舞台はスイスの高級ホテルのスイート・ルーム。

高名な英国人作家ヒューゴ・ラティマー(村井国夫)はドイツ人の妻ヒルダ(三田和代)と長期滞在している。彼はその夜、若い頃の恋人で女優のカルロッタ(保坂知寿)と久しぶりに会うことになっている。

長年、音信不通だったカルロッタが会いたいと連絡してきた目的は何なのか。

ヒルダは外出し、ヒューゴはカルロッタと食事をしつつ、訪問の目的を探る。カルロッタは、自叙伝にヒューゴからのラブレターを載せる許可がほしいときりだすが、ヒューゴは拒絶。いったんはあきらめたカルロッタは、かつてヒューゴがある人宛てに書いたラブレターを持っていると打ち明ける。

文学界の重鎮になろうとしているヒューゴにとって、それはなんとしても隠しておきたい秘密だった・・・。

カルロッタ役の保坂知寿が、二人と比べて、口跡があまり良くなくて、早口なので、私は聞き取りにくい個所があって、こういうことは、演劇で鍛えた人でない舞台で、よくあることなのです。

 ユーモアのある毒舌の台詞から、バーナード、ショウ、の作品かと思ったのでうが、中で、文学界の重鎮になっている、文学者のヒューゴの口から、バーナードの名前が出て来るので、違うのはわかったのです。

 

 カルロッタは、年齢に逆らって、年齢を受け入れることを拒む女優で、彼女は、秘密の手紙を持参して、彼がゲイであること、冷血非道な人間であることを、彼に自覚させたい、とか、ゲイの隠れ蓑の自分は使われたのだ。ヒューゴの、鼻もちならない、紳士ぶりを、自分から認めさせたいのだ、とか、のらりくらりと迫るのですが、ヒューゴは、彼女に、一言も詫びる気配はありません。

  食事を終えて、帰って来た妻は、お酒に酔っています。

 妻は、全てを知りつくしていて、夫の秘密を、貸金庫に保管していることを打ち明けます。同病相哀れむカルロットに、彼女は言います。

 「あなたが来られた本当の目的は、あなたの自尊心でしょう。私達は、感情的な人間です。」

  「人間の本能と、法の間で、苦しみ抜いた、ヒューゴは、人間を個人として見ないで、人間として、社会の存在として、判断するのです」という、ドイツ人の、献身的に彼を支ええる妻が言います。

 ドイツで愛した恋人が、同じドイツ人に依って、殺されました。私は秘書で働いていた時に、ヒューゴから結婚を申し込まれた。ありがたいことだと受けました。」

 感情に支配される人間の、苦しみを知り尽くしたうえで、、人間として、自分をも、客観視し、きつい冗談を言い合って暮らす、夫婦。

 

 そういう夫婦の関係を完璧に守りつつ、彼の冷血、孤独で人を寄せ付けようとしないかたくなさを、受けいれてきた、妻が、感情をこめて言う。

「年を取って、私を頼るようになりました。この人には、私しかいないのです。」

カルロッタは、手紙を置いて出ていく。

その手紙を読み、涙を流す、ヒューゴ。

とてもとても、深いお芝居でした。